ADHDの診断の基準はどんなもの?
ADHDとは
学習塾で発達障害の生徒と約15年関わってきて、一番多かった生徒がADHDの生徒です。
ADHDは「注意欠如・多動症」の略です。
私がADHDの生徒と関わり始めた時は「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれていました。
今でもこの呼び名で認識されている方も多いかもしれません。
ADHDの子の特性は様々ありますが、大きく分けると以下の3つの症状に分けられます。
- 多動性
- 不注意
- 衝動性
例えば授業中でも絶えず立ち歩いたり動き回って落ち着きがない、とか音などには簡単に反応するけれども目の前の課題などに集中できない、先生に指名されていないのにすぐ答えてしまう、などといった言動があります。
一般的にはこのような症状が12歳になる前に6ヶ月以上継続して、家庭と学校などの2箇所以上の生活空間で表れると診断として疑われます。
どのように診断されるのか
医師はその子供や保護者の話をよく聞き、家庭での状況や学校の状況、発育歴や今まで気がかりに思っていたこと、などから情報収集を行い、注意深く観察した上で診断基準に照らした上で診断を行います。
通常、1度の診察で確定診断をすることは難しく、何度も面接を繰り返して診断に至るという場合がほとんどです。
診断の基準にはアメリカの精神医学会が定めた「DSM」を使うことがほとんどです。
ADHD(注意欠如・多動症)の診断基準(DSM-5)
A) (1)か(2)のどちらか:
- (1) 以下の不注意の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月間持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応社会的及び学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである
<不注意>
- (a) 学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする。
- (b) 課題または遊びの活動で注意を集中し続けることがしばしば困難である。
- (c) 直接話しかけられたときにしばしば聞いていないように見える。
- (d) しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動、または指示を理解できないためではなく)。
- (e) 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
- (f) (学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。
- (g) 課題や活動に必要なもの(例:おもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、または道具)をしばしばなくしてしまう。
- (h) しばしば外からの刺激によってすぐ気が散ってしまう。
- (i) しばしば日々の活動を怠ける。
- (2) 以下の多動性─衝動性の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月間持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応社会的及び学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである
<多動性>
- (a) しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする。
- (b) しばしば教室や、その他、座っていることを要求される状況で席を離れる。
- (c) しばしば、不適切な状況で、余計に走り回ったり高い所へ上ったりする(青年または成人では落ち着かない感じの自覚のみに限られるかもしれない)。
- (d) しばしば静かに遊んだり余暇活動につくことができない。
- (e) しばしば“じっとしていない”、またはまるで“エンジンで動かされるように”行動する。
- (f) しばしばしゃべりすぎる。
<衝動性> - (g) しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう。
- (h) しばしば順番を待つことが困難である。
- (i) しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話やゲームに干渉する)
- B) 多動性─衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳以前に存在し、障害を引き起こしている。
- C) これらの症状による障害が2つ以上の状況〔例:学校(または職場)と家庭〕において存在する。
- D) 社会的、学業的、または職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在しなければならない。
- E) その症状は広汎性発達障害、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安障害、解離性障害、またはパーソナリティ障害)ではうまく説明されない。
診断名は支援の手掛かりにすぎません
上記のような診断基準がありますが、診断基準に当てはまるかどうかの判断はなかなか難しいのが現状です。
ただ、診断名はその子が必要とする支援の手掛かりにすぎません。
診断名がつく、つかないに関わらず、私たちにどんな支援が必要なのかを考えていくことが重要なのだと思います、